大胸筋の下部とは?大胸筋の構造を解説
大胸筋は鎖骨から胸骨にかけて広がった起始部から、上腕骨の一点にまとまった扇状の筋肉です。
扇状であるため「大胸筋」と一口に言っても上部・中部・下部の3つのブロックに分かれており、それぞれが独立して発達していきます。そのなかでも下部はお腹と胸の間にある筋肉です。
大胸筋を鍛える際にはそれぞれの筋繊維の方向を意識する必要があり、特に大胸筋下部を鍛えたい場合には腕を斜め下に押す方向のトレーニングを集中して行うと効果的です。
大胸筋下部を集中的に鍛えるメリット
次に胸筋の下部を集中的に鍛えるメリットについて紹介します。
大胸筋を闇雲にに鍛えるのではなく、意識的に下部の筋トレメニューを組み合わせることで次のようなメリットがあります。
大胸筋の下側に綺麗な線ができる
大胸筋は構造的に中部が発達しやすいですが、大胸筋の迫力を際立たせるのは腹部と胸部の間のラインです。
胸筋の段差は大胸筋下部を鍛えないとくっきり浮かび上がらないので、カッコいい胸板を作りたいのなら下部の筋トレは必須。
加えて大胸筋下部の筋繊維は中部の下に潜っているので、下部を鍛えることで中部を盛り上げて大きく見せる効果もあります。
他の筋トレメニューのパフォーマンス向上
大胸筋は肩の動作に大きく関わる筋肉であり、あらゆるスポーツのパフォーマンス向上に役立ちます。
特に下部は腕を振り下ろす動作で使われるため、野球のピッチングやテニスのサーブには必須。
さらに大胸筋は背中の広背筋の拮抗筋であるため、広背筋の筋トレ効果を高めるのにも役立っているのです。
自重で胸筋の下部を鍛える筋トレ4選
自重のみで大胸筋の下部を鍛えるメニューを4種目紹介します。
大胸筋下部は自重でも比較的鍛えやすく肥大しやすい部位ですので、まずはこの4種目をやり込んで基礎を作っていきましょう!
1.プッシュアップ
プッシュアップは基本的な「腕立て伏せ」のこと。
下部のみを狙うトレーニングではありませんが、大胸筋下部にも効率よく刺激が入り、胸板を全体的に鍛えられます。
胸・腕・肩と上半身の主要な筋肉をまとめて鍛えられる定番のトレーニングなので、必ず取り組みましょう。
プッシュアップの正しいやり方
- 肩が45度くらになるように両手を床につける
- 足は肩幅より少し狭いくらいで構える
- 肘を曲げて上半身を深く落とす
- 脇が開かないように注意して、上半身を持ち上げる
- 10回を1セットとして、3セット行う
プッシュアップを効かせるコツ
- 頭からかかとまで真っ直ぐの状態を維持し続ける
- 身体を深く落として、大胸筋が伸びているのを感じる
- 下ろす時はゆっくり、上げる時は一気に動作を行う
2.インクラインプッシュアップ
インクラインプッシュアップは椅子や台などを利用して、上半身に角度をつけて行うプッシュアップです。
足が下で頭が上にくる体勢となることで、プッシュアップの押す方向が斜め下となり、大胸筋下部に効かせやすいトレーニング。
上半身が上側になることで負荷を減らせるため、プッシュアップができない方のステップアップにもおすすめです。
インクラインプッシュアップの正しいやり方
- 台などの地面より高い場所に両手を置き、身体を斜めにする
- 肘を曲げてみぞおちを台に近づける
- 肘を伸ばして上半身を持ち上げる
- 10回を1セットとして、3セット行う
インクラインプッシュアップを効かせるコツ
- 頭からかかとまで真っ直ぐの状態を維持し続ける
- 肩がすくまないようにする
- 肘は外側ではなく足側に向ける
3.スードプッシュアップ
スードプッシュアップは前かがみになって行うプッシュアップです。
前の方にかがむことによって、プッシュアップよりもさらに大胸筋下部を鍛えられます。
手首を使う筋トレなので、始める前に手首を回して軽く準備運動をしましょう。
スードプッシュアップの正しいやり方
- 手幅を肩幅程度に開き、手は逆ハの字にして床につく
- 身体を一直線に保ったまま、ついた手の位置よりも頭が前にくるようにする
- 肘を曲げて顎が床につくほど上半身を落とす
- 肘を伸ばして上半身を持ち上げる
- 10回を1セットとして、3セット行う
スードプッシュアップを効かせるコツ
- ついた手の位置よりも頭が1~2個分、前にくるようにする
- 逆ハの字になるように手を床につける
- 肘は外側ではなく足側に向ける
4.ディップス
ディップスは椅子や台などを使い、上下に身体を動かす筋トレです。
家などで行う場合は、同じ高さの椅子や台が2つあれば代用可能ですよ。
腕立て伏せと違って足も浮かせるので、完全に腕と胸の力だけで自重を持ち上げ、斜め下に押すので大胸筋下部を強く鍛えることができます!
ディップスの正しいやり方
- 身体の両脇にイスなどを用意する
- 肩幅よりも広めに両手をつく
- 両手の力のみで身体を浮かせて、身体を前傾させる
- 肘を曲げて、大胸筋が伸びているのを感じるまで身体を落とす
- 大胸筋下部の収縮を意識しながら身体を持ち上げる
- 15回を1セットとして、3セット行う
ディップスを効かせるコツ
- 肩をすくませない
- 手はハの字でつく
- 身体を前に倒しすぎない
ジムで胸筋の下部を鍛える筋トレ6選
ジムにある器具を使って、胸筋の下部を鍛えるメニューを6種目紹介します。
まずは大胸筋の基本となるベンチプレスなどを行ってから、下部を狙った特化トレーニングとしてこれらの筋トレをやると一層効果的です!
1.デクラインベンチプレス
デクラインベンチプレスは頭が下になるように、身体を斜めにして行うベンチプレスです。
ベンチが斜め下になっているため、自然と大胸筋下部を使いやすくボコッと膨らんだ胸板を作るのには最適なトレーニング。
なおフラットベンチやインクラインベンチに比べて、力尽きて潰れると非常に危険なので、必ずパワーラックの中でセーフティバーを使って行うようにしてください。
デクラインベンチプレスの正しいやり方
- 足側よりも頭側が地面と近くなるようにベンチ台の角度を調整する
- セーフティバーは首より高い位置にセットする
- バーベルの真下に鎖骨あたりがくるようにベンチに寝そべる
- 肩幅より広めにバーベルを持ち、みぞおちにバーベルを下ろす
- バーベルを垂直に動かして持ち上げる
- 10~12回余裕で挙げられる重量で、3セット行う
デクラインベンチプレスを効かせるコツ
- ベンチの角度は20度ほどで傾斜がキツすぎると効きにくい
- 肩がすくまないようにする
- 胸を張る
2.デクラインスミスマシンベンチプレス
デクラインスミスマシンベンチプレスは、バーベルを下ろす軌道が一定のスミスマシンを使ったデクラインベンチプレスです。
下ろして上げる軌道が一定なので、筋トレ始めたての方や女性でも安心してできるのが魅力。
なおスミスマシンを使った場合でも力尽きて潰れると非常に危険なので、必ずパワーラックの中でセーフティバーを使って行うようにしてください。
デクラインスミスベンチプレスの正しいやり方
- 足側よりも頭側が地面と近くなるようにベンチ台の角度を調整する
- セーフティバーは首より高い位置にセットする
- バーベルを下ろしたときに腕が地面と垂直になるようにベンチに寝そべる
- 肩幅より広めにバーベルを持ち、みぞおちにバーベルを下ろす
- バーベルを垂直に動かして持ち上げる
- 10~12回余裕で挙げられる重量で、3セット行う
デクラインスミスベンチプレスを効かせるコツ
- ベンチの角度は20度ほどで傾斜がキツすぎると効きにくい
- 肩がすくまないようにする
- 胸を張る
3.デクラインダンベルプレス
デクラインダンベルプレスは、デクラインベンチプレスと同じくベンチの角度を調整してダンベルで行うプレスです。
バーベルと比べてダンベルの方が動作の自由度が高く、自分の効くポイントを見つけやすいのがメリット。
ベンチの角度が調整できなくてもフラットベンチの上で膝を立てれば同じようにできるので、初心者の方にもおすすめです。
デクラインダンベルプレスのやり方(膝を立てて行う)
- ダンベルを両手に持ち、ベンチの上で膝を立てて仰向けになる
- お尻を持ち上げて身体を一直線にする
- ダンベルをみぞおち辺りに向かってダンベルを下ろす
- ベンチプレスの要領でダンベルを持ち上げる
- 10~12回余裕で挙げられる重量で、3セット行う
デクラインダンベルプレスを効かせるコツ
- 肩がすくまないようにする
- お尻を持ち上げて足よりも頭が低くなるようにセットする
- 肘が外側ではなく足側を向くよう意識する
4.デクラインダンベルフライ
デクラインダンベルフライはベンチの角度を調整できるベンチを使用し、腕を横に広げてダンベルを胸の前で閉じるように持ち上げるトレーニングです。
肘関節の関与が少ないため、上腕三頭筋が力尽きた後でも行うことができ、プレス系の種目をやった後の最後の追い込みに適しています。
大胸筋下部の内側を使えるため、新鮮な刺激を与えられますよ。
デクラインダンベルフライの正しいやり方
- 足側よりも頭側が地面と近くなるようにベンチ台の角度を調整する
- ダンベルを両手に持ち、仰向けになる
- 肘を伸ばし、ダンベルを胸の前にセットする
- 肘を徐々に曲げ、ダンベルを横に広げるように下ろす
- 羽ばたくようにダンベルを持ち上げる
- 12~15回余裕で挙げられる重量で、3セット行う
デクラインダンベルフライを効かせるコツ
- 円を描くようにダンベルを横に広げていく
- 肩がすくまないようにする
- ダンベルを下ろしたときに大胸筋が伸びている感覚を感じる
5.ディップス
ディップスは大胸筋下部の自重トレーニングとしてはベストな種目です。
ジムでは専用のディップスバーを使って行い、15回以上やっても余裕がある場合は荷重ベルトを使って負荷を足すと効果的ですよ。
腕立て伏せと違って足も浮かせるので、完全に腕と胸の力だけで自重を持ち上げ、斜め下に押すので大胸筋下部を強く鍛えることができます!
ディップスの正しいやり方
- ディップスバーを両手で持ち膝を曲げて身体を浮かせる
- 肩幅よりも広めに両手をつく
- 両手の力のみで身体を浮かせて、身体を前傾させる
- 肘を曲げて、大胸筋が伸びているのを感じるまで身体を落とす
- 大胸筋下部の収縮を意識しながら身体を持ち上げる
- 15回を1セットとして、3セット行う
ディップスを効かせるコツ
- 体が振り子にならないようにする
- 肩がすくまないようにする
- 頭を前に出して上半身を斜めに倒す
- 胸は張らず、多少身体を丸める
6.ハイケーブルクロスオーバー
ハイケーブルクロスオーバーはケーブルマシンを使った大胸筋下部と内側のトレーニングです。
ケーブルマシンがあるジムでは多くの人が行う人気の筋トレです。
デクラインダンベルフライを立った状態で行うような動作となり、異なる角度から大胸筋に負荷がかかるのでより大胸筋をデカくしたい人に適しています。
ハイケーブルクロスオーバーの正しいやり方
- ケーブルマシンを頭の位置にセットし、ハンドルを取り付ける
- 片足を前に出して両手でハンドルを持つ
- 両手を広げて胸を張る
- 目線は斜め下を向いたまま、下に向かって押し出す
- ゆっくり両手を広げた状態に戻す
- 12~15回余裕で挙げられる重量で、3セット行う
ハイケーブルクロスオーバーを効かせるコツ
- 目線は斜め下を向いて胸を張る
- マシンから前に出すぎると肩に効くので注意
- 押し出したときの「ギュッ」となる収縮が大事
大胸筋上部と内側を鍛える筋トレを以下の記事で紹介しているので、合わせて参考にしてください。
【参考】大胸筋内側に効かせる鍛える筋トレ
【参考】大胸筋上部を鍛える筋トレ
まとめ:胸筋下部を鍛えて胸筋のラインを作ろう!
大胸筋下部の基礎知識と筋トレメニューについてまとめてきました。
大胸筋下部を鍛えると、腹筋から胸にかけての段差が際立ち、胸板のラインが浮き上がって目につくようになります。
胸筋のラインがしっかり出ていれば多少は腹が出ていても目立ちにくい面もあり、特に年齢を重ねてから差がつくようになります。
大胸筋下部をしっかり鍛えて、カッコいい胸板を手に入れましょう!