

食べることも、仕事のうち

キャッチャーというポジションは、体への負担ももちろん大きいのですが、一番疲れるのは頭です。一球一球に神経を使い、その選択が試合の結果を左右することもある。一試合終わると、体以上に頭がクタクタになっています。
体を維持するために特に意識していたのが、食事でした。とにかくたくさん食べる。食べなければ持たない、というのが現役時代の基本的な考え方でした。夏場に体重が落ちて成績も下がる選手を何人も見てきたからこそ、健康のためではなく、自分が食べたいものを腹いっぱい食べることを大事にしていました。試合後は焼肉か寿司、そのあと、二軒飲んで、帰りにもう一軒。それがルーティンでしたね。ご飯を食べることも仕事のうちだと思っていました。

体の面では、ホームでのクロスプレーで手首を骨折したことはありましたが、肉離れなどの大きな怪我はほとんどなく、もともと丈夫な体質でした。ただ、ボールが当たり続ける太ももの内側は、試合後に紫色の内出血が両足に広がることが日常でした。当たった瞬間は痛いですが、放っておけばそのうち治る。それに慣れてしまっていた部分もありましたね。
ケアについては、広島でプレーしていた頃は知り合いの治療師に自宅まで来てもらって、試合後にほぐしてもらっていました。最後の一年でジャイアンツに移籍した際に驚いたのは、個人でトレーナーや栄養士と契約している選手が多かったこと。チームのトレーナーはどうしても個別対応に限界がありますし、何かあれば責任問題にもなりかねない。だからこそ、みんな自分で信頼できる人を探して動いていましたね。
厳しさを知るから、優しく教えられる

現役時代、精神的にきつかったのはファンからの野次でした。試合でミスをしたり、チームが負け続けたりすると、スタンドからボロカス言われる。家族で外食に出かけただけで、見かけたファンから罵声を浴びせられることもありました。ホテルに家族を装って電話をかけてきて、つないでもらったら見知らぬ人だったということも。
精神的に追い詰められる場面は多かったですが、あるとき割り切るようにしました。どんな状況でも、7割くらいの人は何かしらケチをつけてくる。それを気にしてもしょうがないと思えてからは、楽になりました。今の時代はSNSの誹謗中傷が問題になりますが、面と向かって直接言われていた分、免疫はついていたのかもしれません。

そういった厳しい世界を経験してきたからこそ、今、野球教室で子供たちに教える時は「野球を好きになってもらいたい」という一心で接しています。昔は近くからボールをぶつけるような厳しい練習もありましたが、今はそんなことはしません。特にキャッチャーをやる子には、まず「ボールは怖くないんだよ」ということを伝えています。
防具をしっかりつけて正しい形で構えれば、当たってもそんなに痛くない。むしろ顔を背けるのが一番危ない。近くから軽く投げて「ほら、痛くないだろ?」と体で感じてもらうと、みんな安心した顔をしてくれます。自分が現役で嫌な思いをしてきたからこそ、子供たちには技術だけでなく、「野球って楽しいものなんだ」とポジティブに感じてほしいと思っています。
西山さんにとって休息とは

頭を休ませることです。
6連戦が終わった翌日の月曜日は、野球のことを一切考えないようにしていました。起きるまでとにかく寝る。移動日に練習があっても、レギュラーで出続けている時期はユニフォームを着ることすら嫌で、徹底して休ませてもらっていました。
体の疲れは休めば戻りますが、頭の疲れはそう簡単には取れない。一球一球の判断が積み重なってできる疲労だからこそ、完全に頭をオフにする時間が何より必要でした。それが自分にとっての本当の休息でしたね。
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撮影の合間の一コマ

チームメイトだった金本(金本知憲さん)は、治療院に行くたびに使っていた機械の型番をメモして、帰ってから自分で買ってしまうほどのケアマニアでした。自宅には酸素カプセルが2台、あらゆる治療器具が揃っていて。試合後に一緒に食事に行くと、足首を氷で冷やしながら肩に治療器を当てて、そのままビールを飲みながら飯を食ってましたよ(笑)。あれだけ体のケアに熱心だったからこそ、あの連続試合出場記録があったんだろうなと、今でも思いますね。
